ペナンを訪れるなら、ぜひ試してほしいのが「Cendol(チェンドル)」です。この南国らしい冷たいデザートは、濃厚なココナッツミルク、甘さ控えめで香ばしいパームシュガーシロップ、そして鮮やかな緑色のモチモチとした米粉ゼリーが主役。これらがシャリシャリのかき氷とともに提供され、暑い日には特に格別な爽やかさをもたらします。
チェンドルの起源は、インドネシア・ジャワ島の「Dawet(ダウェット)」という飲み物にさかのぼるとされます。ジャワ島では12世紀の文献にもその記述があり、農村社会で育まれた伝統的な甘味として発展しました。一方で、ペナンやマラッカといった港町では、19世紀以降に冷蔵技術や輸送の発展により氷が普及し、現在の冷たいチェンドルの形が生まれたと考えられています。その結果、チェンドルは東南アジア全域に広まり、各地で独自の進化を遂げました。
ペナンのチェンドルは、特に多彩なトッピングが特徴です。甘く煮た赤豆やコーン、時にはドリアンが添えられることもあり、これらの具材が組み合わさることで異なる食感と風味が楽しめます。ペナンで有名なチェンドルの屋台は「Penang Road Famous Teochew Chendul」で、ここでは観光客と地元の人々が列を作ってその味を堪能しています。口の中で広がる豊かなココナッツとパームシュガーの香り、冷たさがもたらす爽快感は、ペナンを訪れる価値をさらに高める要素です。
チェンドルに似たデザートは、東南アジアの他の国々にも存在します。タイでは「ロットチョン」と呼ばれ、ココナッツミルクとパームシュガーシロップのシンプルな組み合わせが基本です。ベトナムの「バンロット」やミャンマーの「モンレットサウン」なども、材料や見た目に共通点がありつつ、それぞれ独自の文化的背景が反映されています。これらと比較すると、マレーシアやペナンのチェンドルは、トッピングの豊富さや味のバランスが特に際立っています。
チェンドルの材料は意外にシンプルです。緑色のゼリーにはパンダンリーフが使われ、その爽やかな香りが特徴的です。作り方は、温めた米粉の生地を穴の開いた容器で冷水に押し出してゼリー状にするのがポイント。ココナッツミルクやパームシュガーシロップも現地で手に入りやすい食材であり、このシンプルさがチェンドルをさらに親しみやすいデザートにしています。
ペナンを訪れる際は、観光地巡りの合間にチェンドルをぜひ味わってください。その一杯には、ペナンの歴史と文化、そして東南アジア全体の豊かな伝統が詰まっています。食べるだけで、旅の思い出がさらに色濃くなること間違いなしです。