マレーシアを訪れるなら、一度は耳にするであろう「バクテー(Bak Kut Teh)」。スープたっぷりのバクテーは多くの人に愛されていますが、実は「ドライバクテー(Dry Bak Kut Teh)」というバリエーションが存在します。
ドライバクテーは、スープバクテーと同じく豚肉を主役にしていますが、調理法も味わいも全く異なります。主に豚のスペアリブや豚バラ肉が使用され、濃厚な特製タレで煮詰められることで、香ばしく奥深い味わいを生み出します。このタレには、醤油、オイスターソース、甘いダークソイソースがベースとなり、干しチリや干しイカが加えられることが多いです。これにより、甘味、塩味、スパイシーさ、そして海鮮の風味が絶妙に融合した一品となります。仕上げにはフライドガーリックや青ネギが添えられ、見た目の華やかさと食感のアクセントを加えます。
作り方は、まず豚肉を柔らかくなるまで下茹でし、その後特製タレを絡めながら煮詰めていきます。この工程でタレが肉にしっかりと染み込み、食欲をそそる香りと濃厚な味わいが完成します。また、干しチリのピリッとした辛さや干しイカの旨味が特徴的で、一口ごとに異なる味わいが楽しめます。ご飯との相性も抜群で、タレをご飯に絡めて食べるのが一般的です。
スープバクテーとの最大の違いは、その濃厚さと調理法です。スープバクテーは漢方の効いた薬膳スープに浸された豚肉が特徴で、体を温める滋味深い味わいが楽しめます。一方、ドライバクテーは煮詰めたタレが肉に絡むことで、より濃厚で力強い味わいが生まれます。スープの有無により、食べ方も異なりますが、どちらもそれぞれの魅力があります。
バクテーの起源は、19世紀に中国の福建省や広東省から渡ってきた移民労働者たちによるものと言われています。厳しい労働環境の中で体力を維持するために、豚肉と漢方を組み合わせた滋養料理として生まれたのがバクテーの始まりです。スープバクテーが主流として長い歴史を持つ中で、近年ドライバクテーが新たな人気を集めており、特にペナンでは多くのレストランでその味を楽しむことができます。