タルト

ペナンの街角を歩いていると、甘くて香ばしい香りがふと鼻をくすぐります。その香りに誘われるように目をやると、小さなベーカリーのショーケースに色とりどりのタルトが並んでいます。手のひらサイズのタルトは、どれも輝くように美しく、食欲をそそられる一瞬です。ペナンを訪れる人々が、この街ならではのタルト文化に心を奪われるのも無理はありません。

ペナンにタルト文化が根付いた背景には、植民地時代のヨーロッパ文化の影響があります。特に、ポルトガルがもたらしたエッグタルトは、その後華人系の職人たちによってアジア風にアレンジされ、甘さ控えめで軽やかな味わいに進化しました。一方、ペナンではこれに留まらず、ナシレマクやドリアンを使用したユニークなフィリングが生まれ、多文化が融合した街ならではのタルトが生み出されています。

味わいも多彩です。クラシックなエッグタルトは、外側の層がサクッと崩れるパイ生地と、とろりとした卵カスタードの滑らかな甘さが絶妙なハーモニーを奏でます。一方、パイナップルタルトは、ほのかに酸味の効いたパイナップルジャムが絶品で、地元の伝統的なお茶との相性も抜群です。最近では抹茶や紅芋、さらにはスパイシーなサンバルタルトなど、創造性豊かな新作も次々と登場しています。

タルトを堪能するなら、ジョージタウンのヘリテージ地区にある老舗の「テオ・ベーカリー」がおすすめです。伝統的な手法で作られたタルトは、昔ながらの味わいを守り続けています。一方で、「セブンスカイ・カフェ」では、モダンで斬新なタルトを楽しむことができます。また、チョンファット・マーケットでは、手作りタルトを販売する地元の小規模業者も多く、旅の途中で立ち寄る楽しみがあります。